チボの狂宴 - マリオ・バルガス=リョサ

1930〜1960年頃のドミニカ共和国の負の歴史を、30年以上に渡ってドミニカ共和国を支配し、独裁政治を敷いたトゥルヒーリョとその大臣の娘を中心に描いているフィクション。2010年にノーベル賞を受賞したマリオ・バルガス=リョサ著。1930年に大統領に就任したトゥルヒーリョは民衆を弾圧する一方で懐柔し、完璧に近い軍事・独裁政権を実現した。その政権下で上院議員まで上り詰めたカブラルの娘ユレニアは米国に留学。脳溢血で倒れた父を持ちながら政権崩壊後にも帰国することなく背を向けていたドミニカへ、30年以上の時を経て帰国し、生きる屍となった父親との再会を果たす。トゥルヒーリョが暗殺で倒れる1961年とユレニアが帰国した1999年を行き来しながら、トゥルヒーリョ、崇拝者、暗殺者、そしてユレニアの心のヒダを丁寧に織り込んで政権の終焉を描いた作品。

独裁政治下で生きる市民は大変である。独裁者の言葉は白でも黒、黒でも白。殺せと言われれば家族でも殺さねばならず、婚約者であっても遠くへ追いやらねばならぬ。どれほど真っ当な理由があろうとも抗うことは叶わない。ユレニアはわずか14歳にして、その犠牲となった。実際の歴史を語りながらもフィクションであり、作者の目を通して登場人物の心を見るのが大変おもしろい作品であった。この頃のドミニカ共和国の歴史を著した本には、他に骨狩りのときなどがある。

0 件のコメント: