グーテンベルクの謎―活字メディアの誕生とその後 - 高宮 利行

 
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欧州ドイツ、マインツを舞台にグーテンベルグが発明した(とされる)活版印刷に焦点を当て、経緯や歴史を振り返る。活版印刷は羅針盤、火薬と合わせ、世界3大発明と言われている。グーテンベルクが生きた時代は、本は羊皮紙などに手作業で写本していた時代で、金細工など装飾をちりばめた美術品であった。この中で写本を大量生産する工夫が始まり、木版印刷が進められるようになり、そしてグーテンベルクの発明につながっていく。貴族によるパトロンという形の投資が一般的であった時代、秘密裏に個人の力によってこの発明がなされたことは特筆に値する。
 この印刷技術の発明を追って様々な書体も開発された。一つの発明により新しい職業や文化が広がっていくことがある、という典型的な例である。現代ではLEDの開発がそれにあたるだろうか。発明者ではなく、共同出資者のフスト、その娘婿のシェーファーにより印刷が広まったという事実もまた面白い。
 本書は福沢諭吉の1862年遣欧使節団の物語から始まる。福沢は渡欧した当時、このグーテンベルグの42行聖書に接し、触発されている。著者の所属大学でもある慶應義塾大学のデジタルライブラリーに42行聖書の詳細が掲載されている。



◆本を読んで
 グーテンベルクについて深く研究された著者により詳しく紹介されていて、大変勉強になった。彼に関しての記録は少なく、活版印刷の発明は彼とは別の人間だとする研究者もいるくらいだということも初耳であった。本能寺の変 431年目の真実を読んだ時も感じたが、歴史は事実かどうか定かではない定説で語られることがあるので注意が必要だ。
 さて、本書で少し残念なのは筆者のバック グラウンド上仕方がないようにも思えるが、学術的な側面、物語、大学の成果の紹介といったいくつかの要素が入り混じってしまっていて、中途半端な面が否め ない本になっていることだろうか。私は素人なので、活版印刷そのものの技術的な説明であったり、もう少し物語寄りであったりする本を読みたいと感じた。

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