ヴィヨンの妻 - 太宰治


<あらすじ>
太宰の短編集。特に代表作とされる「ヴィヨンの妻」がそのタイトルとなっている。太宰は虚構の名人で、本人も入水自殺した破天荒な生き方をした小説家だ。この作品たちでは戦後の現実への絶望感、倫理観、家庭、家族への夢など「自分」の内面を、しかも死を意識しながら主題として表現している。ヴィヨンの妻では彼と、おさない子を抱えた妻と、その夫婦の間の繊細な心の動きが描かれている。
ここでは「父」を見てみる。この作品の中で彼は、父としての自分を振り返っている。小説なんぞ書いてふんぞり返って、遊廓で放蕩して、子供のための貯金まで使い果たす始末。それを自分で「義」の行為だと 言って癖になってしまったように妻に負担をかけても家からお金を奪って遊びにいくのを止められない。「親が無くても子は育つ、という。私の場合、親が有る から子は育たぬのだ」と。

<本を読んで>
作品群の中で彼は自分の内面の葛藤を表現しているが、結局自分は最後は不倫して自殺して、それはもう勝手な事をやって逃げたのだ。もちろん彼の例は極端すぎるが、大なり小なり男はその身勝手な部分を持っていて、自分の目的を果たすために進んでしまうのだろう。普通、特に現代社会でそのようなことが許されるとは思わないし、私は自殺は最強最悪の「逃避」としか思わないが、しかし小説は、誰しもが持つ葛藤をVividに、刃物を突きつけるような感性で描いていると感じた。別のコラムスティーブ・ジョブズ種田陽平さんが異常なまでにDetailにこだわる事を紹介したが、太宰も様々な情景を小説の中に織り込む天才であったようだ。

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